『──はい』
心なしか覇気がなく、小声でボソッとしている。
三十半ば過ぎの男が、情けない声を出すなと心中思うのは、時間ギリギリに振り込みを持ってきた苛立ちがまだ少し残っているのかもしれない。
しかしもしかしたらお客様のところへいるのかもという思いが、ふと頭をよぎった。
「あ、タカヤさん、いま話せますか?」
発信しているかたわら、作成が洩れたらしい振り込み電文を見つけ、
電文を作成しながらだからか、少しせかせかした喋りくちになってしまっている。
『大丈夫』
タカヤの声が、ほっとしたような響きに変化した。
ユリカが手短に、次長に確認しろといわれた、犯人役が出来るかどうかをきく。
その返答としてタカヤが支店に帰ってきたところだからと言ったとき、
思わず時計を見ながらタカヤの言葉を復唱してしまった。