今回の某社の振込み件数は50件弱ほどだろうか。


一件を送信するのに、人件費や電気代等を含めて数百円かかっていると聞いたことがある。


窓口では為替手数料が高いとぼやかれることが多いが、この会社だけは倍を貰ってもバチは当たらないようにユリカには思えた。


せめて2時までに持って来てくれるだけでも、精神的な負担はだいぶ違うのだが。


ユリカは息をつく暇さえなく、振り込み用紙に目を通しながら、電文を作成していった。


大半は後方オペレーターへ回したので、手元においた振り込みはものの数分とかからずに検印へ回せた。


タジマ次長から防犯訓練の件でタカヤに電話するように言われ、検印を押されて戻ってきた振り込みの発信をしながら、受話器をとった。


ロビーにお客様がいるのに架電をするのは気がひけたが、

両替が回ってきたら隣の窓口の子が返してくれるだろうし、お客様はそのひとだけで、ロビーが混み合っているわけでもない。


短縮ダイヤルに入っているタカヤの携帯へのコールが数回鳴ると、

受話器から、緊張をしたような低くかすれた声が聞こえた。