ちらりと時計を見る。
ユリカが懸命に端末で叩き込んでいるのは、金融機関で振込や決済にも使用されている、全銀システムの時間制限を見てのことだ。
全銀システムというのは、ざっくりといえば、共通のネットワークを介し、様々な金融機関で振込を電文で送信したり、資金決済を行ったりするシステムのこと。
ATM等での振り込みや、よその銀行に開設した口座の引き落とし等が出来るのもこのシステムによってのことだ。
ただし窓口での振り込みについては、他行為替、つまりA銀行以外への金融機関への振込みは3時15分までと決まっている。
自行、つまりA銀行の支店同士の振込みは3時45分まで。
ユリカたちが電文を作成しても、振込み依頼の内容と相違ないよう内勤役席がチェックをし、検印を押されたものを送信する。
一秒たりとも遅れれば無情にもはじかれ、当日送信は出来ない。
振込みだけなら楽勝としても、時間内に送信しなければならないのはそれだけではない上、この支店では電文を打てるのが女性のみ。
窓口担当のユリカを含めた二人と、後方オペレーターだけで対応しなければならないのだ。