ATMコーナーに入ると、ぬるい冷気が男たちを包んだ。


外界とは自動ドア一枚での隔離だが、それでも機械が並ぶにしては涼しい方だろう。


3台のATMと1台の両替機には、列どころか操作をしてる客もいない。
だから涼しいのかもしれない。


カバンの男がそれらの機械に目もくれずに奥へと進むのを、何も考えないままついて歩いた。


カバンを手に提げた男は、濃灰色のぴしりとしたスーツを身に纏っていて、よれよれの服を着ている己との差がありすぎる。


自分より十は若いであろうその男を見ているうちに、なんだか物悲しさが押し寄せてきた。