手元に仕事を残したままにするのが嫌だというユリカの気質を知ってというより、支店の誰もがそうやってきたのを知っているからじゃないかと睨んでいる。


誰だって、為替──振り込み等に関しては気を使う。


例え依頼人が何と言おうと、自分の手元へ置いたまま、翌日に繰り越したくはない仕事のひとつだ。


某社の担当者は、代わっても時間ギリギリに振り込みを置いてゆくが、もしかしたら伝達事項にされてるのではないか、とユリカは穿った目で見ていた。


担当者が変わったときにこちらが毎回『振り込みは2時までにお願い致します』と伝達するのと同様、

『A銀行なら3時ギリギリに振り込みを持っていっても当日処理してくれる』と新人に伝達しているんじゃなかろうか。


こちらの苦労など知らずに。


振り込みというのは大抵、用紙をスキャンして送ればいいだけだ。
読み込んだ文字を自動的に送信してくれる。


だがスキャンで読みとれない文字は、手打ち作業だ。


そして某社の担当者は、何故か一様に、機械で読みとれない字だった。


上手い下手の問題ではない。
走り書きなのか、読み取りの枠からてんで自由にはみ出していて、

人目にも読み取りにくい代物だった。