待ちに待った夏休み初日。
私は友達五人と映画館に来ていた。


「はい、早希の負けー」
「買い出しよろしく!」
「えーっ、私一人で?」


ずらりと並んだチョキの手に、ぽつんとパーの手。
私は手をパーに開いたまま、立ち尽くした。



「あーあ、ついてない」


両手に持ちきれないほどのポップコーンとジュース六人分。
店員さんに頼んでお盆に乗せてもらったけど…。
山盛りのポップコーンは皆の所に行くまでに半分くらいになりそうだ。


「うわっ!」


少しバランスが崩れただけでポップコーンが大きく揺れる。パラパラと何粒かが床に落ちた。



「ねえ、それ全部食うの?」
「へ?」

――それが私と貴方の出逢い。

お伽話みたいに素敵なものじゃない。
憧れてた少女漫画みたいでもなかった。


だけどあの日、
じゃんけんに負けてよかった。

今はそう思ってるよ――。