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「早希みずくさいじゃん!」
帰り道、何も言わない私に柚葉が口を開いた。知ってる人なら最初から言ってくれれば良かったのに、とでも言いたげに肩を叩く。
「付き合わないの?」
すぐに核心に触れる質問をされた。
付き合うも何も、あの人のことよく知らないし。向こうだって私のこと知らないでしょ。
そんな遊びみたいな恋愛に踏み込む勇気がなかった。
「先輩のこと、まだ好き?」
先輩、という単語に激しく脈打つ胸。
それはまだ割り切れてないから?
「知ることから始めてみたら?」
「知ること?」
「そ。思ってるような人じゃないかもよ」
……知りたい。彼のことも、ドキドキの理由も。そう思ってたのは嘘じゃない。
傷つくかもしれないけど、一歩踏み出してみようかな。きっと、傷つかない恋なんてないんだから。