「ちょっと先に入ってて」

駅前のファーストフードに入ったとたんに、今まで我慢をしていたのか、修弥はすぐにお手洗いに向かった。

ホント、バカ。

傘の水を一人で振り払って中に入ると、さすがに雨だから?店内は私たちと同じくらいの学生たちで埋め尽くされてる。

座れるのかな…そう思いながら先に席を確保しようと店内をぐるりと回る。


「――っわ!」


どん、という衝撃と同時に男の声。

――え?

そう思ってすぐに声のする方に顔を向けると、一人の男の子のズボンが――…びしょ濡れ。

私の傘で。


「あ、すいません…!」

軽く水を切っただけの傘はびしょ濡れで、彼にぶつかったと同時にズボンを汚してしまったんだろう。

男の子はズボンの水を払うけれど、染みこんでしまって色が変わってしまってる。


――ああ、もう!

「ホントに、すいません…」

「や、別にいいよ…仕方ないし」

ポケットのハンカチを取り出して服を叩く私に、男の子は逆に申し訳なさそうにそういって笑う。

優しい人で良かった。

そう思うけれど、やっぱり悪い。