稀菜は抱き返す事はしない。

抵抗もせず、ただ

抱きしめられるだけ。

「君を放っておけなかった…。」

「渡鉦さんも、奥さんと
同じくらい優しすぎると
思いますよ。」

渡鉦という男に稀菜は

クスリと笑い顔を見上げた

渡鉦は驚いた顔をした後

同じように笑い返す。

「君は私を優しいと
思っているのかい。
それは、違っているよ。
私は優しくなんてない
卑怯で最低な
人間なんだよ私は。」


渡鉦は稀菜をはなすと頭を撫でる。