「ミルクまだ残ってるから明日ちゃんと
あげてね。自分用にするんじゃないよ?」
「ペッ、ペット用のミルク何て飲まな
いよ!?」
また、先ほどのように否定する彼を見
て、稀菜は顔を和らげて「じゃ。」と
だけ言い立ち去ろうとしたが
「ねぇ。」
青年に声をかけられる。
稀菜はゆっくりと体を向ける。
「君に本当の居場所はある?」
そう聞かれ稀菜は下をうつむき長い沈
黙の後、口を開く。
「分からないよ…。」
稀菜はそう言い足を進める。
「プライド捨てないとホームレスとし
て生きていけないよ。プライド何て持っ
ていたら早死にしちゃうよ?」
そう言い残し稀菜は立ち去った。
その姿を青年は毛布の中から覗いていた。
丁度下でミルクを全て飲み終わった猫は
青年に擦り寄ってきた。
青年は猫を毛布の中に入れてやる。
「お前は馬鹿だな、僕には何も無い
のに…。どうして僕何か構うんだよお前
もあの子も…」
青年は猫と一緒に毛布に入り、さっきと
同じようにベンチに寝始めた。