「はあぁぁー、こういう時って
小動物って得だよなあ。」
ぼ~~、と猫を見ている青年に
稀菜は口を開く。
「この猫の居場所はあなたの場
所なのよ。だからその猫はあな
たと一緒にいるのよ。」
唐突に言われた青年は、驚いた
が今度は嘲笑い始めた。
稀菜はその笑いの理由が分からず
不思議そうに彼を見る。
「君は知っている、猫は気まぐれだし、
一緒にいた人の顔もすぐに忘れてしま
うんだよ?」
青年は悲しそうに笑った。
「だから、同じように今ここが居場所で
も美味しいご飯や、温かい寝床をくれる
優しい人が現れればこいつはその人の所
へ行って僕のこと何か忘れる。
そこがこいつの居場所になる。
僕には何も無いんだ……ここは本当の居
場所じゃないんだ。」
そう言うと青年は毛布の中へと潜り込む。
稀菜はその様子を見ると無言で立ち上がり
足元の猫の頭を撫で青年に振り返る。