ギャラリーを見るが、姿はない。

ああ、そう言えばあの人は自分の興味がないことは、本当に無関心なのだった。

所詮、私は。

と、マイナス思考が進む。

集中しないと取られる、と言い聞かせるが余計なことばかり頭をよぎる。




「百合っ!」



無駄によく通る声。

一瞬、涙が出そうになる。


「俺が見ている限り、百合は無敵だ」


何を根拠に、とつっこみそうになるが、今は1対1をしているのだった。

ふと笑みがこぼれる。


ああ、確かに私は無敵かもしれない。


左手にボールを瞬時に持ち変えると、右にフェイクを入れる。

左にドリブルをつくが、さすが次期キャプテンは、柔軟なフットワークで追い付いてくる。

そのままシュートに行くようにゴールを見た。

おそらく上から、ボールをはたこうとしたのだろう。

田上は飛ぼうと膝を軽く曲げた。

私はその動作を見て、タイミングをずらしてドリブルをつき、ボードの裏からシュートに向かった。


もう膝を伸ばしきっていた田上は、もちろんそのシュートを止めることはできず、宙に浮かぶボールは綺麗にネットへと吸い込まれていった。


それと同時に、歓声が上がり、私は気がつくと体育館に座り込んでいた。

極度の緊張と疲労だ。


桜が私の手をひょいと持ち上げると、言った。

「お疲れ。
格好いいじゃないか、百合。
俺はあまり田上が好きじゃなくてね。
スッキリしたよ」

返事をする間もなく、桜は私を引っ張っていき、体育館の出口まで来た。


「おい、桜!」