痴漢親父が逃げてから、私はさりげなく男の人の腕を解いた。

助けてくれたお礼を言おうと思って、私は男の人の顔を見上げた。

その瞬間、固まってしまった。

絵に描いたような端正な顔立ち。

慌てて目を伏せてしまった。

もごもごと口の中でお礼を言う。

男の人がくすっと笑ったのが分かった。

私はもじもじしている自分が恥ずかしくなって、余計に下を向いてしまった。