自分の心配なんてしたことなかったから…
「今日はちょっと話がある」
「…話?」
めずらしいいわね。
秋葉がアタシに話すことと言ったら、愚痴かエロ話ぐらい。
でも、真剣な目…
それに、なんだろう。
この不快感。
まるで嵐がくる前触れのような……
――
――――
「コイツらが最近現れたグループだ」
見せられた写真は、暴走族の写真。
見たことのない旗が掲げられている。
多分…黒い白鳥?
「グループの名前は黒鳥。総長は3代目、まだ未熟だな」
言いながらタバコに火をつけた。
タバコの臭いが鼻をくすぐる。
アタシは写真をもう一度よく見る。
すると…アレ?
見た事のある人物らしき人が映っていた。
髪は白髪で黒のメッシュを入れている
身長はそんなに高くなくて…
「七瀬?どうした?」
「…秋葉、アタシ知ってる」
「え?」
「この人知ってるよ」
「はあっ?誰だよ?コイツ?」
「“白鳥 蓮”アタシの幼なじみ」
そこに映ってたのは紛れもなく蓮だった。
小さい頃はいつも一緒にいた。
でも、アタシが雷蝶に入ると同時に彼の家が崩壊して…
彼はどこかへ行ったと聞いていた。
数年ぶりだけどわかる。
この独特のオーラ…
何だろう?人を寄せ付けない感じの…そんなオーラ。
「七瀬、今すぐコイツは忘れろ」
「言われなくても」
大丈夫、元から忘れてたんだから。
たとえ…
たとえ“初恋”だったとしても……
その日は話し合いをして、いずれ対決することになるだろうと言う予測をした。
まぁ、当たり前。
この辺の強いチームはみんな、雷蝶に敗れている。
つまり、雷蝶はトップ。
でも、黒鳥もそんな風に倒してきているらしく…
強いのは総長である、浅田 緑と…蓮。
蓮、何で?
蓮は絶対にコッチの世界に来るはずないって思ってた。
なのに…
ダメ。何故か蓮を思い出してから、近くにいると感じてから
蓮を思い出すようになってきてしまった。
アタシは忘れるかのように眠りについた…
――
――――
誰?アタシを呼んでいるのは…
「蓮ー!待ってよぉ!」
「七瀬遅いって!!」
アタシと蓮?!
まだ小学生の頃だ…
「きゃあっ?!」
ずでっとアタシは転んだ。
膝はすりむいたらしく、血が出ていた。
「…」
アタシは無言で立ち上がり彼を追いかけた。
すると、ふと彼が止まった。
「七瀬!転んだんだろ?」
蓮の温かい手がアタシの頭を撫でる…
アタシは堪えてたものが抑え切れなくて…
「ふぇーん…」
泣き出してしまった。
でも、蓮は何も言わない。アタシの頭を撫でて
「よく耐えたね」
そんな優しい言葉を言ってくれた。
蓮はいつでも優しかった。
他の人にはあまり見せない笑顔を、アタシにはよく見せてくれるのが嬉しかった。
そんな蓮にいつしか淡い恋心を抱いていた。
「七瀬、辛い時は俺に言えよ?」
「…うん!」
蓮―
何でアタシ達は変わっちゃったのかな?
誰にも言えないことはたくさんあった。
でも…
「俺が守るよ」
蓮のその言葉を信じて、アタシはがんばったよ。
…蓮、もう忘れちゃったよね。
アタシも忘れてた。
雷蝶に入って、黒蝶になって...
たくさんありすぎたんだね。
「蓮―」
アタシの頬には、
何故だか一筋の雫が流れていた...
「蓮」
静かに眠る七瀬の頬を一筋の涙が流れていく...
「蓮」
彼女は確かにそう呟いた。
寝言で名前を呼ぶなんて強く思ってるんだな…
俺が七瀬と初めて出逢ったのは、確か…7年前?
俺がまだ総長じゃなくて、副総長だった時―
七瀬は一人、眠らない町を彷徨っていた。
一目見たときから、居場所がないんだな…
そう思えた。
「なぁ、そこのねぇちゃん」
すると彼女はビクッと肩を震わせ、怯えた目でコッチを見た。
彼女の右目は眼帯をしていて、体には無数の痣があった。
コイツ…ケンカしてきたのか?
それとも…
彼女は怯えた表情を隠しきれず、涙目になっていた。
「なぁ…」
肩に手が触れようとした瞬間―
「イヤアッ!!!!!」
手を跳ね飛ばされた。
そして、逃げるように去っていった。
何故だか嫌な予感がして、彼女の後を追いかけた。
「きみっ、ちょっと…」
「イヤダッ!ついて来ないで!」
彼女はそのまま信号を見ずに車道へと飛び出した。
車の無数のライトが彼女を照らし出す―