暖かい温もりに目を閉じようとしたあたしだったけれど、
『…僕も、辛いことがあるよ』
控えめに聞こえた、蒼さんの言葉によって、閉じかけた目は開かされた。
あの蒼さんが辛いことがある?
…あんなに幸せそうに、笑うことができるのに。
様々な疑問が渦巻き、咄嗟に蒼さんの方を見ると、蒼さんは笑っていた。
だけど、その表情はいつもと違った。
確かに、笑ってはいる。
笑っているけれど、その笑みの奥には、痛々しいほどの悲しみが表れているような気が、したのだ。
「蒼さ…、」
『生きていることに、意味を感じられなくなることもある。
自分は何の為に生きてるんだろう、ってね』
そう、あたしに笑って見せるけど、それはちっとも楽しそうに見えない。