…そう、思ったけれど。



蒼さんが答えを促すから、しょうがなく口を開く。



「あたし、大和さんの小説が好きなんです」



蒼さんは、そこから聞くと思ってなかったみたいで、また、驚いている。



あたしは、その蒼さんに気にしない振りをして、話を続ける。



「大和さんの文章は、繊細で、柔らかくて、でもそれでいて、強いものを秘めていて。


そんな素敵な文章を書ける大和さんは、どんな人なんだろう、って会ってみたいです」


「本当に文句なしの素敵な作品ばかりで、あたし、全作品持ってるんです。


…でも、」


『でも?』


「この作品は、この作品だけは、もっとこうして欲しかった、っていうものが、あった」