外に出れる開閉扉にも
手をかけるが
こちらも開かない。
更には隅にある
非常のブレーキレバーを
引っ張るがどちらも
言う事をきかなかった。

「錆びついてる。」

そう言ってまた
後方に繋がる扉を叩く。

「おい!車掌!
ここを開けてくれ!
話がしたいんだ!」

私も同じように
扉を開けようと試みたが
触るだけで
バリバリ塗装が剥がれていき
中は錆びが侵蝕していて
まったく動かない。
ブレーキレバーに至っては
スカスカで今にも
折れそうだ。

「外に出ようと
してるんですか?」

と、その様子を見ていた
女の人が
私に話しかけてきた。

「……そう。
私達は本当は
まだ生きてるんです。
たまたまこの列車に
乗り合わせちゃった
だけだから。

えっと……あなたは?」

なんでハジメさんと
一緒にいるの?とも
聞こうとしたけど、
今の切迫感ゆえに
その言葉は省いた。

「私は飼っている犬が
いなくなっちゃって、
それを捜していたら
電車に轢かれちゃった
みたいなんです。
私、視力が
ほとんどないから……。
そしたらいつの間にか
この汽車に乗っていて、
あの人に後ろから
話しかけられたの。
なんか知り合いと
間違われたみたいで……」