私達はそのまま連結通路に
崩れ落ちる。

おじさんの上で
さながら恋人のように
倒れ込んだ私は、
乱れた服を直しながら
やばい……とか
はしたないとか
そんな思いを錯誤させて
列車の後方の様子、
つまり私からして
そのまま後ろを
振り返ったのだが、
そこには私が想像した
光景はなかった。

――え……?

一瞬目を疑うほど
突然の光景。

さっきまでわんさかいた
乗客が何故か
そこから消えていた。
腐敗した体に
鋭く目を光らせていた
黒い怪物も姿が見えない。

タタンタタン…と
車輪がレールを叩く
ジョイント音が
軽快に聞こえてくるだけだ。

「やだ、何これ?
ちょっとハジメさん?

……あっ」

と、うずくまってる
おじさんを起こそうと
声を掛けた時、
私はハジメさんの片足が
途中の膝下あたりから
丸々スッポリ
なくなっている事に
気づいた。

服もそれに沿って
綺麗に短くなっていて、
切り取られたようなのに
血は出ていない。

「どーしたのコレ!?
大丈夫!?」

「いてぇ……
あーあ足が……。
どーやら俺ら
さらわれちまった
みたいだな。」

ハジメさんは
動きづらそうに体を起こすと
わかってる風な口ぶりで
周りを見渡す。