「それにしても
こんな所で何してるの?
電車なんか乗ったりして。」

私の通う日暮高校は
私が住んでいる地域と
呼称が一緒なのに
2駅も離れた場所にある。

学校が設立した時に
市と市の合併の話が
持ちあがったのだけど、
市制施工だか
大人の事情だかで
なんだかんだ話が
決裂してしまい、
すでに先走りの一端として
命名されて
しまっていた学校は
話がおじゃんになった後も
どうもその名に
愛着がわいて
しまったらしくて
あえて名前は
そのままにしてるんだとか。

そんなどーでもいい理由で
私は今電車に揺られている。

「役所に用事があってさ。
……苦手なんだよな
あの空気。」

……役所?

「わかる。
なんか独特の
空気があるよね。
失敗は許されない
みたいな。」

「早口で
まくしたてられたりな。
まったく
どもっちまうっつーの。」

人並み外れた
暮らしをしてるのに
意外とまともな
生活をしてるのが
なんだか新鮮に思える。

だーって
似合わないんだもん。

役場の人に
あーだこーだ説明され
戸惑っている
ハジメさんを想像して
心の中で小ばかにした私は、
気づくとちょっとだけ
憂鬱な気分が
なくなった気がした。

電車も笑っている私と
同じように
エアーを吹きだしては、
ドアを閉めてゆっくりと
駅から走り出す。