「後ろ向いてたのに
よくわかったね私って。」

私が聞くとハジメさんは
私の足元に視線を移す。

「そりゃわかるよ。
こんな悪霊を
連れている女子高生は
世界でおそらく
なつみだけだからね。」

……そうだった。

私には見るも恐ろしい
漆黒の羽をひけらかした
怨霊が取り憑いている。

その名も言うに
言い知れぬ存在なんで
ゴッキーと言っておく。

ひょんな事で
クラスメートにかけられた、
扇情にかられる呪いを
なんとか解く事に
成功した私だったが、
皮肉にも代償として
そのしこりを
身のうちに巣くわせなければ
ならなくなったんだ。

「ガッカリだ。」

「何が?」

「ゴッキーで私を
見定めるなんて。」

この人も普通の人には
見る事ができない
世界が見えている。

俗的な言い方だが
霊感が強いんだ。
それも私とは
比べものにならないくらい。

日々の雑然たる観念や
常識的な事よりは
そっちの方に
目がいってしまうのも
仕方のない事なのかも
しれないけれど……。

まぁ普通にしてる今だって
人の雑踏にまぎれて
おかしなのが
はばかってるんだ。

横にいる日本髪を結った
能面のようなおばさん達は
黒い歯を光らせて
笑っているしね。