走って、走って……、
祭りの太鼓らしき音が
だんだんと大きくなるにつれ、
僕の胸の鼓動はだんだん
小さくなっていく。

これはきっと
そういう事なんだろう。

浮世は夢と言うとおり、
あっという間に
僕から人生は奪われる。
あっけないもんだと
僕は思った。

ふと歩みを止めて
横を見たら、
祭りの入り口へ集まる
魂や人の群れの中に、
1人突っ立って
こっちを眺めている
男の子がいた。

それはどこか
見覚えのある友達。
さっきのジャンケンした
昔の友達だ。

「太郎くん、
君が連れてきた子は
鬼に食べられていたよ?」

その子は話しかけても
喋ろうとしない。
いや、喋れないのか。

さっきは化け物になりかけて
動揺していたし、
目に違和感を覚えていたから
妙だと思わなかったけど、
この子は顔の前面を
剥ぎ取られている。

おそらくは鬼に……。

顔が思い出せないはずだ。
黒く変色していて
影のように
暗くなっているんだもの。

この子は鬼の支配下にあった。

だけど今僕自身が
化け物になりかけて、思う。

昔ぼくと遊んだ時は、
本当にただ楽しく遊んでいた
だけなのかもしれない。

だって女、子供の足で
鬼から逃げれるなんて
甘いんじゃないか?
この子だって、
鬼の下僕となったとしても
少年の心は変わらないはず。
遊びたい時は遊びたいはず。

だからプールで僕が呼んでも
聞こえないふりを
していたのかも。
鬼に友達を会わせたく
なかったから……。

まぁほとんど推測だけど、
弁当を盗み食いしたのは
やっぱり腹立たしいところ。

それでも僕は太郎くんと
距離をとりながらも、
祭りの広場に一緒に入った。
理由は……
まぁ、なんとなく。