「ど、どうしたんですか? いきなり…」
普通の人間と感性が違うのか、それともただ鈍いだけなのか、
俺の恐怖に支配された頭に気づかず
目をパチクリしている。
その姿に、俺は更に恐怖を覚えた。
「…お前だれだよ!!
俺はちゃんとここに人がいないことを確認したし、鍵もかけた。
だいたいこんな時間に他に人がいるはずないし、
それに…」
どうして、浮いているんだ!?!?!?!?
恐いのに、正直に表に出せず、無駄に強がる俺。
逆に格好悪くて、自分で自分が情けなくなってくる。
なのに…
「初めまして。
私はセイラ・キサキ、天使です。
天からきたので鍵も何も必要ないのですよ」
ただ、そう言って、ふわりと笑った。
確かによく見ると
肌は人間離れした白色で
背中にはもっと白い柔らかそうな翼が生えている。
冬の二時に吹き付ける風は冷たく、今起きていることが夢でないことは、俺が一番自覚している。
今起きていることを受け入れて、
この天使…セイラの言葉を信じるしかないようだ。