「果歩に気があるんじゃない?」
「えー? それはないでしょ」
あたしは「だって初対面だよ?」と付け加えた。そう、あまり違和感がなかったけど、初対面だ。
高校一年生の六月なんて、まだまだ知らない人の方が多い。まだ恋愛とかそんな余裕ないでしょ。あたしなんて同じクラスの人すら覚えてないのに。
「じゃあ、何でわざわざパンを?」
「……あたし、そんなに欲しそうな顔してた?」
もしそうだったら、めちゃくちゃ恥ずかしい。そりゃ焼きそばパンはあたしの中で一、二を争う好物だけど、すごい食い意地張ってるみたい。
あたしは急に恥ずかしくなって両手で顔を覆った。そんなあたしを見て、ぷっと吹き出す千夏。
「ちょっとー、笑い事じゃないよっ」
「あははっ、ごめんごめん!」