売店を出て数メートル、廊下を通り抜け階段まで来た時にやっとあたしの足がとまった。後ろを振り向くと、千夏が腕を組んでご立腹だ。
「果歩ー、いきなり何なのよ」
「ごめん! あの場に居ずらかったんだもん」
「え? ……あ! あの声重なった人かっこ良かったもんねっ。3組の岡田くん!」
「へ? いや、そうじゃなくて」
確かにあの人ちょっとかっこ良かったけど、あたしが居ずらくなったのは別の理由。
あの人の隣にいたあいつ――理玖の存在。
理玖とは保育園の頃からの腐れ縁、所謂幼なじみってやつ。だけど、中学に入ったあたりからほとんど話さなくなった。人数が多い中学でクラスが一緒にならなかったし、お互い部活に入って接点が少なくなった。
でも、あたしはきっとそれだけじゃなかった。理玖がどんどん知らない人になっていく気がしたの。