「果歩、アド教えてよ」


休み時間、理玖があたしの席にきて言った。手には黒い薄型の携帯電話が握られている。


「あれ? 知らなかったっけ?」
「携帯持ったの高校からじゃん」


理玖の言葉に納得して、あたしは鞄から携帯を取り出した。

ちょうど話してない時だったから、お互いアドレスはもちろん、携帯を買ったことすら知らなかった。
あたしは画面を赤外線送信にし、理玖の携帯の受信部分に向けた。
少しずつデータが送信され、今度は理玖のデータが送られてきた。

「あれ? 理玖、果歩ちゃん狙い?」


そう言って理玖の肩に腕を回したのは、クラスメイトの川越君。クラスで一、二を争う長身で、その長身を生かしてバスケ部に入っている。

元々ウザイ彼だったが、最近彼女ができたためか更にウザさが増している。でもあたしが見る限り、理玖と川越君はいつも一緒で仲が良さそうだ。