「んーっ、やっぱいいね、屋上」


あたし達は千夏の提案で、サボりの定番とも言える屋上にやって来た。
さっきまで降っていた雨は止み、雨上がり独特のアスファルトの匂いがする。

生ぬるい風が吹き、髪を揺らす。外の空気を吸ったせいか、少し冷静になれた。


「あたし、変だよね?」


あんなことで怒っちゃうなんて。
冗談だって思いながら、きっと少し期待してたんだ。
もしかしたら、って自惚れちゃってたんだ。


「果歩は変じゃないよ。岡田くんが軽いの」


千夏は、あの様子じゃいろんな子に同じようなこと言ってるよと溜め息をついた。
イケてると思ってたのに、と残念そうだ。
確かにあたしだって少しがっかりした。

惹かれかけていた人が女たらしだなんて。
でも――。


「でも、好きな人いるって言ってた」


そういえば、あの補習の日確かに言ってた。
冗談なんかじゃなさそうな真剣な目をして。


それなのに、好きな人いるのに誰とも付き合わないって矛盾してるよ。