「あら残念。あと1つしか残ってないのよ」


売店のおばちゃんが申し訳なさそうに眉を下げる。あたしは1つだけ残っている焼きそばパンに目をやった後、隣にいる人をちらっと見た。その人はあたしと同じようにパンを見るとあたしの方を見た。


「あ、あの、あたしメロンパンで!」


あたしは一瞬だけ合った視線を逸らし、110円を払ってパンを受け取ると早々とその場を去った。

後ろから千夏が「待ってよ、果歩!」と呼ぶ声が聞こえた。