「しっかり掴まってろよ」


そう言われて、あたしは理玖の腰に手を回した。
そういえば、小学生の頃はよく乗せてもらったな。二人で知らない土地まで行って、迷子になったりもした。

あの頃小さかった背中は、大きくなっていて違う人みたい。あたしの知らない理玖は、どのくらいいるんだろう――?


それから理玖は、本当に一生懸命自転車をこいでくれた。あまりの速さに二人とも風で顔が引きつり、髪はボサボサだ。お陰で、自転車で行くと一時間はかかるところを二十分程で着いてしまった。
一瞬、どうしてこんなに頑張ってくれたんだろうと思い、そういえば理玖も同じクラスだったことに気付く。
あの先生、遅刻して行ったら何言われるか分からないもんね。