「果歩!」
久しぶりに理玖から呼ばれた名前。一度止まった足は、もう前には進まない。ゆっくり後ろを振り返ると、理玖の目はまっすぐあたしを見つめていた。
「……理玖」
こんなにまっすぐ理玖を見返したのは久しぶり。まるで、ここだけ時間が止まったような気がした。
「乗る?」
「え?」
「電車じゃ確実に遅刻だろ? チャリの後ろ、乗っけてやる」
理玖の言葉で忘れかけていたことを思い出す。今日の1時間目、小テストがあるんだった。携帯で時間を確認すると、30分に1本の電車は通過したばかり。
あたしは理玖に言われるままに後ろに乗せてもらうことにした。