「1時間目、小テストなのに!」
しかも、よりによってすごく厳しい先生の授業。
遅刻なんてしていったら、何て言われるか……。
猛スピードで身支度を整え、玄関を飛び出した。
――と、向かいの家のドアが勢いよく開いて、同じ状態の人がもう一人。
同じ高校の制服、寝癖のついた髪、見慣れた顔。
あたしが今一番話したくて、一番会いたくない人。
一瞬目が合ったが、あたしはすぐに逸らして駅への道を急ぐ。
「果歩!」
背中を突き抜けるような理玖の声。
名前を呼ばれて、反射的に足が止まる。
――きっと、勇気を出したのは理玖の方だった。