千夏は気が済むまで笑うと、鞄から携帯電話を取り出して時間を確認した。
今日は彼氏とデートかな。帰り際に千夏が時間を確認する時はいつもそうだ。


「今からデート?」
「うん。今日講義休みなんだって」
「そっかあ、大学生って忙しそう」
「だねー。レポートとか大量だって」


千夏の彼氏は、あたし達より三つ年上の大学生。
一度だけ見たことがあるけど、頭が良さそうで優しそうな人だった。
たった三つしか変わらないのに、大学生ってだけですごく大人に感じる。
そんな人と付き合ってるなんて、千夏はすごい。あたしだったら、絶対会話噛み合わないよ。


「果歩も誰かと付き合ったらいいのに」


バイバイをする時に千夏が言った。
あたしは千夏と反対側の電車に乗り、昼間のことを思い出した。