そっと私の手を離して翔ちゃんが覗き込む。



「愛菜、今日は逃げないんだ。」



口の端を少し上げていつもの調子で言う。




「もう!こないだはホントにびっくりしたんだもん。
まさか翔ちゃんが私を好きになってくれるなんて思ってなかったから。
だけど、あの時はごめんなさい。」



「いや、俺だって愛菜を思う気持ちが恋愛感情なんて気付いたの最近だし。
緒方君に感謝しなくちゃな。」



「?緒方さん?どうして?」



「いつだったか、帰りの遅い愛菜を送って来てくれただろ?」




そういわれて、緒方さんに送ってもらった日のことを思いだした。




「そうだったね。帰りが遅くて翔ちゃんがすっごい怒ってた。」




「遅いこともだけど、あの時怒ってたのはちょっと違うんだ。
愛菜が俺の知らない男と歩いてることに腹が立ってた。
だからその時だよ。お前を誰にも渡したくないと思ったのは。
情けないけど、それがあって自覚できたんだ。」




そうなんだ・・・

だからあんなに怒ってたの?

じゃあ、それって・・・




「・・・ヤキモチ?」





そう言った瞬間翔ちゃんの顔が赤くなった。

もっとからかいたかったけど、それが出来なかったのは翔ちゃん以上に私が赤くなったから。




「なんで、お前が赤くなるんだよ。」




そう言ってもう一度抱き寄せられた。




「愛菜に渡したいものがあるんだ。
だからそのまま待って。」




翔ちゃんは私を抱き寄せたまま何かをし始めた。

くすぐったくて顔を上げた私を翔ちゃんは少し離す。





「・・・これ・・・」