「愛菜!」



少し焦ったような、怒ったような翔ちゃんの声が耳に届いたのは、この丘に来て二時間が経った頃だった。




「翔ちゃん・・・」



目の前に来た翔ちゃんの肩は走って来たからか上下している。




「ごめんね、突然。お仕事お疲れ様。」




そう言った私を軽く睨んで呼吸を整えた翔ちゃんが口を開く。



「お前な、こんなとこで待たなくても家でいいだろ。

変な奴に声かけられなかったか?」




変な奴・・・?


ん~、部活帰りの高校生?


でも彼らはこんなとこに一人でいる私をからかってただけだろうし・・・


散歩中のおじさんとは少し世間話しただけだし、サラリーマン風の人は駅の場所を聞いてきただけだし・・・




翔ちゃんが来るまでに話をした人を思い浮かべても該当する人はいなかったよ?と思ってる私の返事を待つ前に翔ちゃんが溜め息をつく。





「これだから・・・。ここには来るなって言ってあっただろ?」




「うん。だけど変な人はいなかったよ?特になにも困ったことはなかったし。」



「何かあってからでは遅いんだよ。バカ。」




・・・バカ?!