「ここが風呂で向こうがトイレ。」
嫌々と言う言葉がぴったりな透の表情を見ながら大雑把な説明を聞きながら改めて部屋をぐるりと見渡した。
部屋の中は一言で言うと、メルヘン。
明らかにお姫様スタイルな部屋は透の趣味ではないだろう。
正直、私の趣味でもない。
いつまで続くかわからないこのトレード生活をして行く中でこのフリフリメルヘンな部屋で過ごさなきゃいけないのは、正直に言えば気分を重くさせていた。
「自分の食い物は自分で買って食えよ。あとは……左奥の部屋は入るな。質問は?」
「ない。ないけどさ…この部屋どうにかならない?全然落ち着かないんだけど。」
「あいつに何か言われる覚悟あんならどうにかすれば?」
嫌々、本当に嫌々と私を見ている透にチクリと傷んだ胸の奥の痛みは気付かない振りをする。
もう一度、部屋を見渡してから小さくため息を吐き出して玄関付近に置き去りにされたままの自分の荷物を取りに足を踏み出した。
「もう説明は良いだろ。」
「……夕飯は?」
「いらねぇ。今日は帰らないから戸締まりだけはしろよ。」
ひらりと一度手を振って横を通り過ぎる透にまたチクリと胸の奥が傷んだ。