「違う違う、そこは必要ないから……」



右側で商業技術の教科書を開いて電卓をたたいていた季都々が、体を乗り出してあみ空のプリントの問3を指差す。

つられるように左側にいるあみ空の手元を覗き込めば、意味の分からない文字の羅列があって、もはやそれは英語ですらなくただのアルファベットの集合体だった。



「こっちの歌訳してみてあみちゃん」
「ディヴ、あなた、は……わた、えー……無理」
「諦めんの早いわよお馬鹿。ここは……」
「"あなたは一体いつまで嘘を貫くというのか"」



言葉に詰まるあみ空に手を貸そうとシャーペンを手放して近寄れば、あみ空の左隣、つまり私の正面に座っていた明日木さんが、ぽつりと答えをあみ空の耳に届けた。