「俺、は……、藤野を名前で呼ぶ、資格なんかないんですよ」 「……はぁ?それって必要なのか?」 「挨拶を、返せなかったんです」 「…………?」 一年前の、寒さが目に見えるようになってきた11月の、半ば 。 藤野が、 多分藤野が、 高校生活で一番、 返してほしかったであろうはずの、 挨拶を、 藤野の今後を左右するであろうはずの、 挨拶、 を、 俺は、 俺、 は……、 返して、 やれなかったんだ。