「お前またタイム落ちたな」
「……ですか」
その一言に、更に気が沈む。
もう少し言葉を選んだりしてほしい。
大体、俺の調子が悪いのが誰のせいだかわかっているのかこの人は。
「なんだよー。悩み事なら俺が聞いてやるからさ!元気出せよ!な!」
てめぇが原因なんだよこの野郎。
ぶちりと、それは堪忍袋の緒と呼ばれるものが弾けるように切れた音で、俺の苛立ちは頂点に達し、気がついたら口は上下左右に器用に開いてへらへらと目の前で笑う竹谷先輩へと止まらない言葉をぶちまけていた。
「ええ!ええ!だったら言わせてもらいますよ竹谷先輩!先輩が店で藤野に意味深なこと言うからですよどうしてくれるんですか!俺が!俺の気持ちが!藤野にバレでもしたらどうしてくれるんですか!藤野と放課後デートひゃっほーどころじゃねーよ!」
俺の言葉は全てただの八つ当たりだった。
我ながらなんと情けないと思いつつ、
「とりあえずお前さ、1000メートル5分はやばいから」
そして先輩の口から謝罪が紡がれることはなかった。