「おはよう、原田」
「ああ、早いな藤野」
「今日の挨拶運動は瀬木先生だからね」
「……そうか」
ぺこりと瀬木に頭を下げに行ってからまた僕らに追いつく藤野に、何故だか申し訳なさを抱き、それでも時間ギリギリまで瀬木と居ることより、僕らと昇降口に向かうことを選んでくれた藤野に、口角が上がる。
「まあ、一緒に教室まで行ってあげてもいいよ」
僕が藤野に向ける言葉は、何もかもが役立たずで使い物にならないけれど、僕が藤野を、藤野あみ空を、好きだと溢れるこの気持ちが、少しでも伝わっているというのなら、僕の日常は、決して無駄なものなんかじゃないのだ。
「そりゃあどーもありがとう。だけど、シャーペン折ったら泣くからね」
「加藤……、お前んなことしてんの?」
「しーらない」
瀬木を想う藤野はやっぱりむかつくけど、でも藤野の涙はもう死んでも見たたくないから、瀬木から貰ったとかいうシャーペンを壊すのは当分諦めてやろう。
考えて考えて考えて、選りすぐった空文を君に。
終