「原田は、さ……」 藤野を名前で呼ばないの? 「は……」 それは、きっと、けっして、あり得るはずのない、事柄で。 僕だって、藤野を名前で呼ぶつもりはない。 僕が藤野を名前で呼ぶときは、藤野が僕の奥さんになったときだ。 原田はひどく呆けた顔で僕を凝視してくる。 何を言っているのだと眉間にシワを寄せる原田は、中学の面影があってまた藤野に殴られそうだ。