「で?だったら人がなけなしの勇気で藤野にやったハンカチを破ってもいいと?」
「当たり前だよ。だって原田あれでしょ?藤野がトイレ終わった後に手洗ったり、ご飯食べる前に手洗ったりして、自分がプレゼントしたハンカチで藤野がその手を拭くことに興奮するんでしょ?」
「そんな不純な動機をはらんだ覚えはねぇ!」
「やだやだ原田菌が藤野に移ったらどうしよう」
「お前は小学生か!」
怒鳴る友人の原田は、僕と同じで藤野が好きだ。
去年は僕と原田と崎山と藤野、藤野の友達の荒島と鈴木で同じクラスだったのだけれど、今年原田(と荒島)は1組、僕らは8組と、随分と離れてしまった。
だからなのか原田は、藤野と関われる朝と放課後を、ものすごく大事にしていた。
もちろん僕はそれが気に食わない。けれど藤野がなんてこともないように笑っているのだから、僕が嫌がる理由がない。
それでもまあハンカチは破かせてもらったけどね。
「ってか原田朝練は?」
「ばっかお前!朝練なんかして汗だくになったら藤野に汗臭いって思われんだろーが!」
「原田はいつだって暑苦しいよ」
「藤野に嫌われなきゃ結果オーライ」
「タイム落ちるんじゃない?」
「そんなやわじゃねーよ。まだ陸上部のホープだもん俺」