「竹谷先輩……」
嫌そうに(少なくとも嬉しそうには見えない)、少し遅れて崎山は振り返った。
先輩、ということは三年生か。
無駄に身長の高いその竹谷さんとやらは、私を視界にとらえると、なぜか楽しそうににやりと笑った。
「おー、藤野も一緒かぁ」
あれ、私のこと知ってるみたいだ。
ってことは、私がこの人を一方的に忘れているだけなのだろうか。
おかしいな。
どっかの戯言遣いじゃあるまいし、記憶力には自信があったのだけど。
「どうも。」と、頭を軽く下げて応えると、竹谷さんはより一層にやにやと嫌な笑みを浮かべた。
まるで値踏みをしているかのような、そんな視線。
居心地が悪い。