―――だけど、
奇跡は起こることがある。
起こらないことが大半だけど、それでも起こることがある。
俺はそれを知っている。
「…ダイチ?」
ソニアに肩をつつかれてようやくはっとした。
20分ほど走ったところで、タクシーは大きな学校を前にして静かに止まった。
場所の指定も料金の支払いも、ソニアが完璧に助けてくれた。
広がるグラウンドに、きれいな校舎。横には寮がくっついている。
グラウンドにすぐ目が行くところでどうしても、自分がスポーツバカであることを確信せずにはいられない。
「そのトモダチの名前は、なに?」
ソニアが校門に駆け寄りながら、そう聞いてきた。
「誰かに聞いたほうがはやいよ」