きっぱりと、何の恥ずかしげもなく言い切った兄貴。
まさかの返答に呆れて、俺の涙は半分乾いた。
思わずぽかんと口が開く。
「な…っ」
「英語なんか喋れん。俺は日本人だ」
「機内食はもらってたじゃん」
「手で示されたから、カレーを指差しただけ」
なんということだ。
涙が完全に乾いた。
キレイな顔立ちをしていて女には人気の高いはずの兄貴が、ひどく間抜けに、そして頼りなく見えた。
「じゃあなんで着いてきたんだよ。てっきり通訳&道案内を完璧にしてくれるかと思ってたのに」
「アメリカ行きたかったから」
ふあ、と欠伸をしながら面倒臭そうにそう答えた兄貴は、ふと俺の手元に目を向けた。
「何書いてんの?」