違う声がした。
はっと顔を上げると、軽く額をこづかれた。
…いつの間にか目の前に立っていた、マイクを持ったままの雄大先輩に。
「ったくお前は。俺の歌、ちゃんと聴いてんのか?」
「すいません……最初から、聴いてませんでした」
「ははっ」
雄大先輩は声を上げて笑った。
拓巳先輩と隆志先輩も、歌本から顔を上げてこっちを見た。
「大したもんだよ、大地」
「は…?」
「お前は日向に似てる」
思わず目を見開いた。
全員の先輩と、目が合った。
…言葉が出てこない。
「…」
なんていうか、
嬉しいとか
そういう感情を超えている。
…愛しい気持ちになる。
優しい気持ちに、なる。
日向先輩がいてくれたことを思い出すと
温かい気持ちになる。