その時のその瞬間を思い出すように、懐かしそうな表情になった。



「わたしは眼鏡なんて掛けちゃって、もう本当に真面目すぎる地味な高校生だった。でも彼は本当にきらきら眩しくて。憧れだった。



――『ごめん、前よく見てなかった』


って、白い歯見せて軽く笑ってね。ぶつかった瞬間は頭に来たんだけど、一気に許せちゃったぐらい。


それにわたしは彼に憧れてたから、緊張やら恥ずかしいやらで顔もまともに見れない状態ですぐに立ち去ろうとしたの。

そしたら『待って。よく見せて』って言われて。びっくりした。


思わず心臓がドキドキしたんだけど、彼が指さしてたのは、わたしの持ってたパンフレットだったのね」




少女漫画みたいなシチュエーションを期待しちゃって。恥ずかしかったな。

カナさんはそうはにかんだ。



「わたしはそのパンフレットいっぱい持ってたから、あげるよって言って持ってたやつ全部あげたの。驚いてたけど、『悪いな。ありがとう』って笑顔見せてくれて。本当に嬉しかった。

だからわたし、勇気を出して聞いてみたの。




『あなたもアメリカに行くの?』って。」





呼吸さえうまく出来ないまま、俺は黙ってカナさんの話を聞いていた。