――日向先輩は結局、あの学校にはいなかった。
オジサンは申し訳なさそうな顔で残念がってくれたけど、俺はすぐに気持ちを落ち着けることが出来た。
仕方ない。
…なんとなく、分かってはいたんだ。と。
モーテルを出て、タクシーを探しながら駅方面へとゆっくり歩いた。
旅はもう終わろうとしている。
最後に訪ねた学校が、まさにその場所だった。
なんて奇跡が起きればいいなと思ったけど…
やっぱりそんな、甘いことはないんだな。
そうため息をつかずにはいられなかった。
――もう帰ろう。
帰らないと。
俺を待つ人たちのところへ。
帰って、K大のための勉強をしないと。
そう自分に言い聞かせたときにちょうどタクシーが向かい通りに見えた。
慌てて手を上げて、タクシーを呼び止めようとする。
まさにその、瞬間。
「……ん?」
足に軽い衝撃を感じた。