「……よしっ」
そして誰もいないことを確認すると、体を滑り込ませた。
思っていたよりもずいぶん余裕に穴を通ることが出来た。
グラウンドの上に降り立つと…久しぶりに踏む土の感覚に身震いがした。
改めてゆっくりとグラウンドを観察してみると、それは藤島のものよりもずっとずっと広かった。
藤島だって、スポーツにかけては日本有数の実力校。
だからグラウンドだってかなり広い方だ。
でもここはそれよりも更に広くて、スタンドまできちんと備え付けられていた。
あの日大会があった陸上競技場みたいだった。
「さすがだな…」
ぼそっと、独り言を呟いた。
誰もいないグラウンドの中心に立ってみる。
――風が体を突き抜ける。
そっと目を閉じて、また開く。
あの日の歓声が聞こえる。
あの日の拍手が聞こえる。
―――あの日の俺たちが見える。