瞬きをした。
滲みそうだった景色の向こうに、2年前と何も変わらないようでいて…それでも少し大人になった、拓巳がいた。
「拓巳…」
「日向は藤島陸上部に何も言わずに去っていった。あの頃の俺たちが思ったみたいに…きっと大地も日向に色々思ってるだろな。
…でもね俺、あれはあいつが下した最後の、一番勇気がいる選択だったんだと思ってる」
大丈夫だよ。
拓巳はそう笑った。
いつもドジばかりだったあたしを励ましてくれた、あの優しい笑顔だった。
「俺でさえ気付いたんだ。賢い大地は気付くよ。日向に会えても会えなくても…きっと見つけて帰ってくる」
――日向がいなくなった、本当の理由を。
あたしは何も言えないまま、ただ頷いた。