――――その頃、日本では。 「おい、柚?」 「…」 「おい」 頬をつねられるまで気付かなかった。 はっと顔を上げると、拓巳が怪訝そうな表情をしている。 「人を呼び出しておいてぼーっとすんなよ」 「あっ……ごめん」 怒ったような顔していても、拓巳は優しいからやっぱり怒らない。 その安心感からか、あたしの心の中は無防備に晒されてしまう。 何かあったんだな。 ――拓巳にそう言われるまで数分とかからなかった。