泣きたいのを止められなかった。

自分の気持ちを言えたからなのか

慎吾の香織さんへの気持ちが切ないからか

久しぶりに抱きしめられたからなのか



何の涙かは分からない。

ただ、
慎吾の匂いが嬉しかった。




『そだね、
私…ゲームオーバーだ。』




「ちがうよ………
佳乃より、俺が
もうとっくに前からゲームオーバーだ。」



『…へ?』




慎吾の手が私の頬に触れて、

腕の中で振り向いた私は泣き顔を露わにした。






「最初は確かに…
香織に似てるってただそれだけで興味があった。


でも、
本気の恋愛なんてもう二度としたくなかったのに、
どんどん気になるんだ。


気づいたら
香織のことはもう俺の中ですっかり過去になって…
佳乃しか見えてなかった。



不思議だよな…
こんなに似てるのに。


佳乃じゃないとダメなんだ。

自分であんなゲーム決めておきながら…
本気になっちゃってゲームオーバーなんて

まじかっこわるいけど…


ごめんな。

ただ一緒にいたくて。





あのモデルの子は
本当に勉強を教えてただけで…そんなんじゃないんだ。


ちゃんと話したんだけどな。
すっげー好きな人がいるってことも。」




『慎吾…………う〜っ……』




私は耐えきれなくなってポロポロと涙を流した。


慎吾は困った顔で笑って

涙をすくってくれる。





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